記事一覧 | ホーム »信者アニメ評論
All Pages |  1  |  2  |  3 

2009年11月27日

『マイマイ新子と千年の魔法』は凡作か傑作のどちらか

減点方式の採点だと佳作~良作の映画で、
加点方式の採点だと傑作の映画である、といった感想です。

エピソードの内容などネタバレはありません。
(後述のyoutube映像にある内容については述べます)

「マイマイ新子と千年の魔法」公式サイト

では減点方式から。
クライマックスのシークエンスが、映画のタイトルとちょっとずれてしまい
結局そのまま終わるのがカタルシスに欠けました。

一般の観客は、後述するテーマ性を
「頼まなくても勝手に考えて補完、納得してくれる」存在ではなく
主人公たちの行動言動を銀幕上で追跡しているわけですから
これは肩すかしを食らうのでは無いでしょうか。

別に、ああいう展開で水を差された!けしからん!というわけではなく、
クライマックスにおいて、それぞれ別の思想で動いていた二人が
最終的に合流(テーマ的な意味で)しなかったのは「アレ?」と思いました。
(あーネタバレすれば説明しやすい)

今までと違う思想で動いた新子はどう変わったん?
そして貴伊子は新子に何を伝えたのか?

がスルー気味というのは、自分的にはちょっと不満です。

丁寧に丁寧に積み上げてきたパズルの完成形を見せられる前に
幕が下りてしまった感じです。
「あとはみんなで考えてね!(はぁと)」という意図なのかもしれませんが
(そしておそらく皆正解にたどり着けますが)
個人的には映画の中でやってほしかったです。
ただ、もう片方の二人組に関してはちゃんとオチがついていて
嬉しかったですね。

以上減点方式ですが、まぁこれは、スピルバーグ系映画で育った私の
視野の狭い映画鑑賞方法なのかもしれません。
でも一般の人はこんな感じじゃないかなーと思います。

(なお上記の批判については、他者の感想を読んでいたところ
「セリフにのぼらないなど分かりにくいが
実は描写されていたのではないか?」と思い始めました。
そういう意味では監督のこの記事は納得がいきます。
すでに映画を見た方にお願いがあります。 - メイキング・オブ・マイマイ新子

でも自分はファーストインプレッションを大事にしたいので
あえて書きました。)

(12/10追記:2回目観ましたのでこの論点は別記事でフォローしました。)

 
さて真面目くさった話はこれぐらいだ!

細部は神!
エロい!
監督の持つフェティッシュで満ちあふれているぜ!!

肩の高さから人物の後頭部を捉えたショットが良いです。
観客から表情が伺えないのがエロいです(プロモの中にもありますね)。
足元だけを捉えたシーンが多用されていますがこれまたエロい。
足フェチかよ!
そしてそれが物語的に重要だったりするのがまた良いです。

これを見てなんかムズムズしちゃった人は劇場に急げ!(速攻終わりそうなので)
まぁ私は公式トップのキービジュアル見ただけで劇場行こうと思いましたけどね!
監督自ら言ってるのでどうどうと書きますが、良い百合モノだと思います。
極めて正統的なガール・ミーツ・ガールです。

若年向けアニメの最近の潮流として、
ソフトレズ的行為をとにかく繰り返す作品が多いような気がします。
これは、
視聴者への釣り針になる描写を細切れに積み重ねる手法と理解できます。
大量のコンテンツを次々とザッピングしていく現代では
そういった手法は分からないでもないですが(実際に支持されている)、
釣り針が見え見えなのと、細切れでは大きなうねりが起こらないので
個人的にはイマイチ乗れません。

その点本作はベテランのワザを見せつけてくれます。
表面的でない内面における心の交歓を描くのが、百合の本道である。
割とマジに言ってます。

あと陰影マニア的には、夜のシーンがたいへん美しいと感じました。
「暗い」という表現はとても難しいと思いますが
懐中電灯という小道具を用いたのが白眉だと思います。
エフェクトや合成処理も含め
デジタル時代ならではの素晴らしい表現でした。
監督は昔からCGをさりげなく使うのが上手いと思います。

真面目な流れに戻りますが、
昭和の時代をいたずらに美化しない姿勢も好印象でした。
上のシーンには「チョコレートは贅沢品だった」という意味合いがありますが
そこから別に飽食の時代を批判したりしません。
ついでに千年前の社会を批判したりもしません。
ですので私のような若輩者でも居心地良く見られます。

千年ぶんを描くわけですから特定の時代に肩入れしないのは正解ですが
良く踏みとどまってくれたという感じです。
誰とは言いませんが、世代がもっと上の監督が作ったら
ミラクル説教タイムがあったことでしょう。


最後に、
千年分の時間を「土地」というキーワードでまとめあげ
超常現象要素無しで
違和感なく一本のフィルムに落とし込んだのはすごいです。
普通なら企画段階で蹴られますよ。完成形が全く想像できませんもの。
自分も積極的に吸収、見習わなくてはならないと思いました。

プロモを見て「??なんだこれは」と思った方は
是非劇場に足を運んでください。マジで興業的にやばそうなので。

 

超最後に、鉄オタ視点から(読まなくていいです)。
まさかアニメの中で、
工場引き込み線のディーゼル機関車(しかもロッド式)を見られるとは。いやーん凸型車両素敵。
貨車の台車(足回り)もちゃんと昔風だし。
蒸気機関車はさすがに誰でもちゃんと調べますが、
DLまでリサーチしていたとは驚きです。
見習おう。


『マイマイ新子と千年の魔法』上映存続を! - 署名活動するなら『署名TV』
よかったらお願いします。
(企画者に対しても)匿名可、メールアドレスがあればOK。
モバイル用:http://www.shomei.tv/mobile/project.php?pid=1385

2009年08月07日

「サマーウォーズ」は完璧すぎて物足りない

ご無沙汰しております。早速観てきました。
要旨:
1.映画賞総なめか。脚本すげぇ
2.次回は、ブレイクスルーが無いと飽きられそう

予告編程度しかネタバレは無いと思います。

 

映画「サマーウォーズ」公式サイト

演出と脚本の完成度は大したもんです。
田舎とバーチャル空間という、水と油の要素を
恐ろしく巧みにまとめ上げています。

あと、監督のご結婚と、「家族」がテーマと聞いていたので
「あーあ細田監督丸くなったかぁ、毒の消えたフィルムかも知れないなぁ」と
思っていましたが、何のなんの、
人間関係に不安定な要素を織り込むことによって
そこから順序立てて「家族って素晴らしい!」を説明しています。

「家族って素晴らしい!」を「アタリマエダロ」として
過程を描かずに結論づけてしまうと、
同じイデオロギーを持っている人、
日頃からそういう事を実感できている人は
自分の立ち位置を再確認できて大満足なんでしょうが、
そうでない人には「ハァ?」となります。

いや私のやっかみじゃないですよ、
例えば反抗したい盛りの十代の人はそうではないでしょうか。
教育目的で作られたフィルム、
または完璧な善意で作られたフィルムの持つ
落とし穴に嵌っていない事に「さすが細田」と思いました。

さて後半では悪い点を。

完璧すぎて、スキマからはみ出てくるような情動があまり伝わってきませんでした。
あ、鑑賞中はドキドキしましたが。
ハヤオ爺のフィルムのほうが、脚本が滅茶苦茶でも情念が伝わってくるのは
どういうこっちゃ。
知的好奇心は物凄いレベルで満たされるのですが、
後を引くような感覚は無かったです。

なんというか、電子音楽と同じで
寸分の狂いのない完璧なリズム故に味気ないというか。
表情芝居などにギャグマンガチックな作画が散りばめられていて
「アナログ的ゆらぎ」を表現していたような気はしましたが
逆にそれに違和感を感じたほどです。

勝手な提案ですが、楽団員が優秀すぎて
監督の指示に寸分違わない演奏をしてしまうので
次回作には素人っぽい人か、
またはへそまがりの人を混ぜるのが良い気がします。

最後に、「時かけ」以降の「細田ブーム」に関して
個人的見解に過ぎませんが一言述べたいと思います。

特にアニメオタク層に言えるのですが、彼らは
「アニメの演出=見た目、スタイル」と思っていたフシがあります。
ぶっちゃけて言えば、
『ヤマカンや新房の演出はすごい!』であります。
(なお彼らの「スタイル」に関しては私は否定しません。)

そんな折りに、細田監督が、伝統的なモンタージュ技法などの
演出をハイレベルで操りながらやって来た。
それを観たアニオタさんがビックリして高評価に繋がった、
と私は考えています。

ですので、細田演出に「慣れてしまった」観客が
今後何を求めるか、と考えてしまいます。
「オレはこれが好きなんだぁ!」という
作り手のパッションではないでしょうか。

海外進出を狙っているのか、
お行儀を良くしたような描写もいくつかあったので
次回作では、もっと弾けて欲しいなぁと思います。
もっとこう、むっつりスケベな感じが欲しいのです。なんちゅうか。

過去に書いた記事
細田守『時をかける少女』演出ピークのズレ(2006年08月06日)
『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』にみる細田守のカメラワーク(2005年10月21日)

あーあと、私が前から応援してるモノをネタにしてくれて
ちょっと嬉しかったです。
嘘が多かったり取材してなさそうな感じでも、許せます。
(でも国際情勢を鑑みて差し替えました、という理由だったら嫌だなぁ)

2006年08月06日

細田守『時をかける少女』演出ピークのズレ

観てきました。たいへん満足しました。満足しましたが…何なんだこのモヤモヤは!
単なる屈折したファン心理なのか!?というわけで屁理屈こねてみました。

時をかける少女-公式

段階的にネタバレしていきますのでそのつど警告します。とりあえずネタバレ無しの一般的な感想です。

  • 爽やか感動系が好きな人におすすめ。主題歌の雰囲気そのまま
  • アニメオタク向けでもないしノスタル爺向けでもないよ
  • 男女別なく主人公に共感できそう
  • 思ったよりコミカルで楽しい
  • 作り込みが細かい、下手な実写映画よりも映画らしい
  • あの芝居を実写でやるのは(邦画ビジネスの現状からみて)困難だと思う
  • 同ポ最高
  • ジブリ映画何本ぶんだよ的な一流美術スタッフ
  • マモたんはやっぱりヘンタイだなぁ

自分で書いていて胡散臭く感じるぐらいにマイナス点が見あたらないのですが、
「うぉぉぉぉこれは傑作だぁぁぁぁ」という感じにはならないのです。
あれこれ考えた結果ひとつの仮説を思いつきました。

固有名詞やエピソードの内容は書いてありませんがストーリー構成について詳説するので、察しの良い方はどんな物語か気づく可能性があります。


 


 


続きを読む "細田守『時をかける少女』演出ピークのズレ" »

2005年11月24日

神戸グルーヴ・神戸守『苺ましまろ』#6演出研究

この項はセリフや画面の詳細なネタバレを含んでいます。

神戸守氏の演出による長尺の場面を見ていて、そのシーンに非常に没入できることがあります。有り体に言えばシンクロ率MAXと言いますか…。例えば『コメットさん』1話最後とか『エルフェンリート』13話クライマックスとかです。私はそれを勝手に『神戸グルーヴ』と呼んでましたが、その正体が何なのか、今まで分かりかねておりました(音楽のせいかなと思っていた)。

ところが、今回アニメ版『苺ましまろ』の6話を観て何か分かったような気がしましたので、その考察を述べさせて頂きます。何でわざわざ書くんだと問われれば、自分の芸への肥やし(センスないんで理詰めなんです)もしくは偏執的ファンレター(ヨゴレ仕…もとい目立たないお仕事ばかりされてるので)とお答えしておきます。

『苺ましまろ』の6話の一番の見所は、クライマックス?の筆談シーンです(寝ている伸恵姉を起こさないように筆談で馬鹿話をする)。次のカットを見てください。
ichigom6_1.png
前後のカットも描きましたが、私は(c)のカットが素晴らしいと思います。「これが神戸守の真骨頂だ!」と思いました。

さて上図においてそれぞれのカットのつながりを考えた場合、 (c)は別に無くても良いことに注目してください。 (c)は美羽が『シーッ』とやることと千佳がスケブを手元に寄せる描写だけですのでストーリー的には大して意味がありません。『シーッ』をやらせたければ(d)の頭でやれば良いでしょう。

では何故(c)を挿入したのか。ポイントは(c)で手前に置かれたスケブにあるのではないでしょうか。

ichigom6_2.png

スケブに書かれたセリフは少々前のカット(左図No.01)で示されたものです。従って(c)(No.10)からは(01)が強くイメージされます(青線)。

一方、(01)と(10)の間には筆談を行っていないシーン(黄色部分)があり、くしゃみネタ、かつそれが10数秒間続くのでそれなりに強い印象を残します。しかしこの場面全体はあくまで筆談ネタがメインですので、くしゃみネタで話(視聴者のイメージ)が脱線しないよう、(10)のカットで流れを戻そうという意図があるのではないかと思います。

ここまでがひとつ。

次に(10)から励起されるカットが(11)です。演出的には(10)より遙かに重要かと思われます。まずアナと茉莉をロングで捉える事により(16)(17)への伏線を張っています。さらに(11)の構図が最後のオチのカット(27)に対応しています。 (27)の面白さはこの画ならではと思いますが、アナと茉莉が画面外に居るため、(11)で各キャラの位置関係を示しておかないとパッと見理解しがたいと思います。

ということでカット(11)は本場面のキモなわけですが、それを視聴者に印象づけるため(10)が補強として置かれているのだと思います。

先に述べたとおり(10)は別に無くても、ストーリーの意図は伝わります。また推測ですが脚本にも指定は無いでしょう。しかしあえてそれを入れることにより、それぞれのカットが有機的に結合されるのだと思います。

何かに引っかかる事無く場面が頭の中へ素直に流れ込んでくる、そんな神戸グルーヴは、以上の様な些細な小技が積み重なることによって生まれるのではないでしょうか。

またこういった手法(モンタージュ、カット繋がりを重視)を使用する演出家は、実写ならともかくアニメの世界では貴重であると思います。というのもこんにち、作画に頼ってアニメを演出する場合が多く、作画レベルの低さが演出の破綻を招きやすいという状況があると思うからです。

そのなかで、氏のモンタージュ主体の演出手法は、作品のクオリティの低下をくい止める有効な手段だと思われます。また何よりも、予算等が厳しくても『演出』によってクオリティを底上げできるということが素晴らしいと思います。

おわり。

最後に、以上は全て神戸氏の手柄ということになっていますが、事実に相違がございましたら関係者にお詫び申し上げます。またそれが無ければ氏の演出は成り立たなかった、ということで横手美智子氏による脚本は素晴らしかったのではないかと思います。

苺ましまろ 3
B000BI55UG
ばらスィー 生天目仁美 千葉紗子


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2005年11月06日

板東のグーパンとにゅうの泣き顔はイコールである・神戸守の作家性を妄想する

アニメ『エルフェンリート』4話までの感想を元にリライト:2005/11

この文は神戸守監督論とさせて頂きます。なので原作であった描写、あるいは脚本で示されたことを監督の手柄みたいに述べてしまうかもしれませんが、その場合はお詫び申し上げます。

神戸仲間(なんだそりゃ)と話をすると決まって話題になるのが「何で神戸守監督作品はマニアにすらウケないのか」です。今のところの結論は『氏の作家性が見えてこないから』ですが、どっこい私には見えます(ヤバい発言ですね)。その作家性が自分が信者を続けている理由なのですが、そのへんをちょっと述べたいと思います。ちなみにぶっちゃけますと、演出だけを見るなら細田守氏の方が好きだったりします。


地上波放映ではカット&ボカシされまくりだったらしい『エルフェンリート』が記憶に新しいですが、氏の過去作品を見ていくと、暴力とかに代表される『負の感情』を描くことにこだわりがあるのではという感じを受けます。なかでも印象的だったのは、『出撃!マシンロボレスキュー/8話 激突!ジェット対ステルス』において、主人公と悪の側の少年が対決をするシーンでした。

最近のアニメにおいては、戦う少年少女は使い魔とか魔法とかを操り、実際に拳を交える事は少ないように思えます。自主規制のせいかもしれませんが、なんだか冷戦期の米ソ代理戦争を連想させます。

まぁそれはさておき。そういうなかにあって、くだんの対決シーンはお互いが巨大ロボ遣いなのにも関わらずグーでパンチなガチンコのケンカでした。しかも『バキィ!』ではなくて『ごっ』という感じのです。ショーアップされたプロレスのようなケンカではなく、心に響くケンカシーンでした。ちなみに監督自らコンテを切っています。

さすがに『コメットさん☆』ではそんなシーンは無かったですが、あのなかでも『泣く』とか『怒る』とか負の感情を覚えるような場面も割とストレートに描写していたように覚えています。(ライバルのメテオさんが最終的に主役を食ってしまったのもその辺が原因?)

負の感情を伴う行為を正面切って描くというのは、最近の商業アニメにおいてはゆるやかではありますが禁忌となっている気がします(これは主観でしょうか)。『視聴者が気まずくなる描写』はスポンサーが許さないでしょうし、作り手も受け手も「これはCoolじゃない」と思っているような気がします。

突然思いついたのですが、宮崎御大が最近多用する『超大粒の涙』は一種の『照れ』なのではないでしょうか。

もちろん、アニメの中の無邪気な空想世界に対して「現実はそんなに甘(略)」というような馬鹿な講釈を垂れる気はないです。しかし完璧に消臭されハッピーな描写ばかり、不幸な描写もハッピーの為の味付け、では何が本当にハッピーなのか訳が分からなくなると思うのですがいかがでしょうか。

どんな感情も等価に描かれてこそ、各々が真に迫ってくる。

『エルフェンリート』において、にゅう(ルーシー)の不幸な生い立ちを際だたせるために残酷描写を入れる、これは演出ロジックとしてはオーソドックスなものですが、氏はそれを徹底的に行う。
それが神戸氏の作家性なのではないかと、個人的にはにらんでおります。

…あくまでいち信者の妄想に過ぎませんが。


参考:


エルフェンリート 1st Note
B0002XVV4O
岡本倫 鈴木千尋 小林沙苗


Amazonで詳しく見る


関連商品
エルフェンリート 2nd Note
エルフェンリート 3rd Note
エルフェンリート 4th Note
エルフェンリート 5th Note
エルフェンリート 6th Note
エルフェンリート 7th Note
by G-Tools

前のページへ次のページへ
All Pages |  1  |  2  |  3