細田守『時をかける少女』演出ピークのズレ
観てきました。たいへん満足しました。満足しましたが…何なんだこのモヤモヤは!
単なる屈折したファン心理なのか!?というわけで屁理屈こねてみました。
段階的にネタバレしていきますのでそのつど警告します。とりあえずネタバレ無しの一般的な感想です。
- 爽やか感動系が好きな人におすすめ。主題歌の雰囲気そのまま
- アニメオタク向けでもないしノスタル爺向けでもないよ
- 男女別なく主人公に共感できそう
- 思ったよりコミカルで楽しい
- 作り込みが細かい、下手な実写映画よりも映画らしい
- あの芝居を実写でやるのは(邦画ビジネスの現状からみて)困難だと思う
- 同ポ最高
- ジブリ映画何本ぶんだよ的な一流美術スタッフ
- マモたんはやっぱりヘンタイだなぁ
自分で書いていて胡散臭く感じるぐらいにマイナス点が見あたらないのですが、
「うぉぉぉぉこれは傑作だぁぁぁぁ」という感じにはならないのです。
あれこれ考えた結果ひとつの仮説を思いつきました。
固有名詞やエピソードの内容は書いてありませんがストーリー構成について詳説するので、察しの良い方はどんな物語か気づく可能性があります。
「盛り上げるところを間違っているのではないか」

本作のクライマックスには3つの盛り上がり(ピークA~C)があります。
このうちピークAが必要以上に盛り上がりすぎていて以降のDパート全体が
『後日談』っぽくなってダレているのではないかと考えます。
加えて、CとDパートでは『命題(≠テーマ)』がはっきり分かれていて
さらに別物感を出してしまっています。
(記号で伏せた部分は本記事の最後でネタばらしします)
個人的な意見ですが、本作でいちばん重要なシーンは上図の
『ターニングポイント』です。
ターニングポイント(以降TP)すなわち流れが変わるところ、です。
プロジェクトXで言えば、一発逆転のアイディアをひらめくところなんかがそうですね。
なので物語で一番盛り上がる箇所です。
さて時かけでは、本来ならばTPとその前後を一番盛り上げるべきなのに
ピークAを置いたことにより、盛り上がりがかなり前倒しになってしまい
TPでどーん!とカタルシスが来なかった、
それで消化不良な感じに(私は)なってしまったのではないかと。*1
極端な話、ピークAは要らなかったのではないかと思います。
(あのシーンは好きですよ、念のため)
そうで無ければ
- 命題BをもっとCパートに突っ込む
- ピークAをあっさりと終わらす
- TPをもっと盛り上げる
あたりの事をすれば良かったのかもしれません。
参考までに、宮崎駿氏は『どこのシーンをいちばん盛り上げるか』に気を使っている感じがします。
分かりやすいのが魔女の宅急便で、
ヒロインの葛藤(飛べない)と物語の盛り上げ(飛行船の事故)を最後に同時に解決させ
その後は息つく間もなくエンディング、とこれ以上無いくらい明快な構成になっています。
とってつけたようなスペクタクルの是非はともかく、カタルシスのある物語です。
御大が「起承転結にはもう興味ないんですよ」とのたまっている最近の作品でも
ハクと千尋の落下シーンとか若返ったソフィーがトンネルを抜けるシーン(うろおぼえ)とか
『どのシーンが頂上か』という点には拘っているように見受けられます。
そろそろ完全ネタバレします。
ちなみに、どこで一番盛り上がるかは人それぞれなので、
「愛だろ、愛」な人は最後できっちり盛り上がって万事OKなのかもしれません。
私は『人(特におなご)が決断して踏み出すところ』が見たい人なので前述のTPに注目した訳です。
でもラストシーンを見る限り監督の意図は後者であったと思います。
-上図のネタバレ対応表-
命題A: 功介と果穂をくっつけること
命題B: 千昭と真琴の恋の行方
ピークA: 踏切事故を阻止しようとする
ピークB: 千昭の正体/別れ
ピークC: 全てを正しい方向へ/別れ
ターニングポイント: アザが01になっている事に気づく/最後のタイムリープ
最後に
色々ほざいてますが本当に良い映画だと思います。
ただどうでも良いシーンでも各スタッフがいちいち神懸かった事をするので
全体でみると「?」な所があったな、ということです。
また『本当の面白さは理屈を越えたところにある』というのは漫画描いてますので良く分かります。
だいいち全部理詰めでできるのなら、俺は今ごろ超売れっ子作家ですよ。
あ、今気づいたのですが
最後のタイムリープで全てリセットされたって事は真琴と功介がくっつくのもアリなのか。
待ってるって言ったってヒトの一生では届かない気がするし。
と考えるとシーン106とかラストシーンも意味深だぞ(グラウンドでの位置関係とか)。
…ちょっと評価が上がったかも
参考:私の細田信者文
『おジャ魔女どれみドッカ~ン!』にみる細田守のカメラワーク
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